きもち

ツイッタのように毎日のキスマーク

短編

ただただ、橙色になっていく空をみていた。

校舎の陰は黒く長く伸びて、部活動をしている生徒たちも、もそろそろ終わろうかと片付けをしているところだ。

 

急にガタッと音がして、あれ、おかしいな、と思う。さっきまでわたし一人だったはずなんだけど、

「あ、ごめん」

 

前髪が目にかかりそうで、いつも眠たそうな同じクラスの男の子だった。えっと、名前はなんだっけ。

 

「あ、うん」

「夕日みてたの?」

「そう、きれいで」

男の子は探し物をしてる様子で、いまは自分のロッカーをごそごそとやっている。

「なに探してんの?」

「え、いや、、あ、あった」

 

文庫本を手に取る彼。

「ああそっか、いつも本読んでるもんね」

「うん、本はいいよ。

じゃあおれ帰るね」

「あ、うん、ばいばい」

 

ふわっと彼が踵を返して教室から出ようとしたときに髪の毛が揺れて少し顔が見えた。目の下にほくろ。と無意識に口に出していた。彼はもういない。

 

橙色だった空は少しの時間で藍色に変わってしまっていた。部活動をしていた生徒たちも、もう校庭にはいない。

「教室の鍵返すのめんど〜〜。」

そっとつぶやいて教室を出る。薄暗い廊下。

 

「気をつけて帰るんだぞ」と担任の先生にやんわり怒られて、ちなみに提出物の提出が遅れてるぞなんて怒られたりした。

うつむきながらペタペタと歩いてたら、下駄箱にあの男の子がいた。

 

「小説、読んでたら遅くなった」

なんて聞いてもないこと話してる彼がかわいいなとおもったから

「家、どっちの方面?」と聞いて笑った。

 

なんとなく、なんとなくだけど、彼の顔がちゃんと見たくなった。